スキー&ニセコ・北海道旅行記

基礎スキーって何?技術選上位がアルペン出身者ばかりになる理由

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今回のスキー上達系の話は基礎スキーの最高峰である全日本スキー技術選手権大会で、なぜアルペン競技出身者が上位を占めるのかということを書きたいと思います。

動画はこちら

見終わったら、音楽チャンネルとしても利用できます。再生リストに移動し、お好きなジャンルの音楽をお楽しみください。

スキー技術選上位がアルペン出身者ばかりになる理由

今回はこちらのツイートを深掘り解説します。

スキー技術選の上位がほとんどアルペン出身者である理由

①スピードに強いから

当たり前の話ですが、スキーは高速になるほど難しくなります。

②アルペン選手はコブや深雪なども滑るから

アルペン選手はいろんなシチュエーションの雪質に慣れてます。整地だけでは上手くなりません。

https://twitter.com/snow_life_ski/status/1676125292447039488

③旗門を滑るから

基礎スキーだけやると自分の好きなタイミングでターンできます。なので基礎しかやらない人が旗門を滑ると同じゲレンデに棒が立っただけで下手になる人が多いです。

④トップとの差が明確に数字で出るから

タイムが縮まると上手くなったと主観ではなく客観的にわかります。

https://twitter.com/snow_life_ski/status/1676126269027807233

まず冒頭で言っておきたいのは

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中には競技をほとんど経験していない選手で活躍している技術選の選手もいる

ということだけ書いておきます。

 重要なのは

「なぜアルペン選手が多いのか?」

であり、競技とか基礎とか抜きにして考えてもらいたく、動画と記事を作成したので改めて

「スキーの上手さとは?」

をきちんと定義したいと思います。

まず、アルペン選手が技術選上位に居続ける上記の4つの理由を書いていきます。

アルペン競技出身者が技術選上位に来る理由

ジャッジ競技ですので賛否あるかと思いますが、一応個人的な主観ではありますが4つを解説していきます。

理由1:スピードに強いから

ステンマルクの記録を超えたミカエラ・シフリンは現在4種目全てで勝利しています。

技術系、高速系どちらも勝てるレベルなわけですが、アルペンスキー選手も高速系にはほとんどの選手がチャレンジしています。ちなみに私はスーパー大回転までやっていました。

100キロ近いスピードでも怖さがないという選手が多いと思いますが、基礎限定の方でフルワンピーで時速80キロ以上の高速ターンしたことがある人はかなり少ないのではないかと思います。

ちなみになぜ高速系が大事かというと

  • 目と体の動きが高速に慣れるため
  • 高速系種目をやっておくと技術系が遅く感じる。
  • 超ロングターンでエッジで切っていく滑りを習得できる。
  • ジャンプを体験できる数少ない種目(稀にスーパー大回転、大回転でもジャンプがあるコースがあります)
  • スピードに対する恐怖心が減る。
  • 技術も大事だが、恐怖があった場合、「気持ちで滑る」という領域で冷静なコントロールを求められる状況を経験できる。

 色々理由はありますが、代表的なものはこんなところでしょうか。

ちなみに全日本ナショナルスキーチームは2002年以降、高速系種目のサポートをしていない状況で20年以上この種目から撤退しています。(須貝龍選手は確か個人参戦だったはず。最も難しいコースの1つ、オーストリアのキッツビューエルを滑っています)

理由2:アルペン選手はコブや深雪も普段から練習で滑るから。

アルペン競技を経験したことない人は意外に思うかもしれませんが、ゼッケンが後ろの選手ほど荒れたコースを滑らないといけないので、

  • コブなどの不整地
  • 深雪
  • たまにハーフパイプに入って遊ぶ
  • 自分からジャンプして遊ぶ

こういったことを休日に自分で自主トレで結構やっています。

 また、最近ではレデツカ選手が史上初のスノーボードとアルペンの畑違いのスポーツ2種目で平昌五輪で金メダルを獲得しています。

ちなみに、元日本のスラローマー、湯浅直樹さんは陸上の高跳びで全中3位という記録もあり、

トップ選手は何やらせても大体上位レベル

ということが結構多いです。

 ここ数年、夏と冬のオリンピックに出る選手が出てきたりするなど、二刀流は当たり前。

スポーツで大事なのは

「夏でもどんなスポーツでも、脳で考えたことを正確に体に伝えること」

であり、これを普段の夏の練習からやることが重要です。

このことは武井壮さんも専修大学の講義で言っているので、YouTubeで「武井壮 専修大学」で検索してみてください。

スポーツが万能という人は実はごく稀で、多くのアスリートは脳をどう使うかにフォーカスしています。

私のスキー部でも神経系トレーニングを徹底的にやっていました。具体的には

神経系の練習
  1. 目をつぶって、「パン」と手を叩くまでひたすら待ってビーチフラッグスをやる瞬発系トレーニングを兼ねた練習
  2. 球技など様々なスポーツをやり、あらゆる脳の神経細胞ネットワークを構築し、どんな場面でも動ける体にする。特に道具を使うテニス、バトミントンなどは有効でよくやってました。(スキーも道具に正確に力を伝えコントロールする必要があるので)野球、ソフトボール、サッカー、バレー、バスケ、卓球、ラグビー、水泳、自転車、陸上競技など多義に渡ります)
  3. 「目を閉じて片足で何分立てるか選手権」などのバランストレーニング(その他、体育館のロープを腕だけで天井まで登る、平均台、マット運動なども定期的にやります)

いわゆるコーディネーショントレーニングというもので、12歳までにトップ選手だった人の60%は1日2時間外遊びをしていたという統計もあり、この12歳までが非常に重要と言われています。要は「いろんな運動や遊びをしなさい」ということです。

12歳以降もトレーニングで能力は伸びるので高校のスキー部でもやってました。もちろん、昔から全日本ナショナルスキーチームもやってます。

基礎スキーだけ、雪上だけでアルペン選手に勝とうと思ってる方は、こういったトレーニングを毎日しているか?まず自問自答してみましょう。

そもそも世界で勝とうとする選手やチームは練習量と質が違うのです。

学生でも夏場平日1日3時間から6時間、合宿では12時間くらいトレーニングとなっています。これに勉学も入ってくるのでなかなか大変。私は睡眠時間3、4時間でアルバイト2つ掛け持ちしていた時期もありました。

理由3:旗門を滑るから。競技の未経験の人は競技の基礎と応用が抜けている。

次に最大の違いと言っても良い旗門。

基礎は自分で好きなターンができますが、アルペン競技はポールセッターが立てたコースを滑らないといけません。勉強にも基礎があり、応用がありますよね。

アルペンの中にも基礎があり、応用問題もいっぱいあります。

技術選は自分でラインを描くことができますが、アルペン選手はコースセッターが指定したコースで、

「最短ラインでかつあなたの最速スピードで滑ってきなさい」

という問題を常に解くわけです。

なので、

技術半分+コースインスペクション半分(下見)=タイム

という公式でアルペン競技が成り立っています。

スキーというスポーツは、基礎の次元で止まるとそこで成長が止まります。なので、「上達」を考えるならば、本来であれば基礎と競技を分けること自体がおかしな話で、

「上達に役立つことは全部試すべき」

と考えます。

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実は基礎派の人で技術の幅を広げるため競技を高校から始め、インターハイ出場する人もいますから。技術に壁を作ればそれ以上の技術の引き出しは作れません。

基礎・競技という考え方の問題点

アルペン競技は、

自分の好きなタイミングでターンできない中で正確に高速でターンする技術

が必要になります。

よくあるのが

  1. 基礎の世界ではズラすのが主流
  2. 競技の世界ではズラさないで滑るのが主流

こういった分け方をする人がいますが、どちらもスキー技術であることには変わりありません

ですが、中には

自分達でカテゴリー分けして2番に進むのはタブー

と思ってる人がなぜか日本にはいます。

しかし、実際アルペンの世界ではズラすのはタブーでも、1番と2番の両方を使います。

 これは個人の主観ですが、1番の世界で甘んじる人たちは単純に技術レベルの限界を自分で作っているのではないかと思っています。一方、本当に上手いスキーヤーはどちらの世界でも勝ててしまいます。(アルペンから転向しモーグルで活躍する人もいます。技術選だけではないのです)

競技の世界の技術

また、アルペンの場合どんなポールセットでも難なくこなす能力も必須です。基礎だけしかやってきた人だとこれができないでしょう。不整地に関しても一緒で、

「技術選が評価する不整地の滑り方ではなく、モーグルW杯のジャッジが評価する滑りをしなさい。ただし、エアーはなしで良い」

という特別ルールの応用問題が出たら、基礎だけの人はコブを滑れても、タイムでモーグル選手に負けるでしょう。(何人か本気で練習すれば、モーグルの世界でも通用しそうな選手いますけど)

プラスアルファの技術、つまり応用を解ける力が必要なのが競技の世界なのです。(基礎という世界をあえて設定するならば)

アルペンやモーグルはタイムも競うわけですから、必然的に夏場・冬場のトレーニング内容が決まってきます。

100分の1秒でも速くゴールする。その中で正確に素早くターンをする。

これをアルペンやモーグル選手は日々練習するわけですから、筋力はもちろん、瞬発力、筋持久力、持久力全ての数値を上げないとタイムが出ません。

技術を上げるには、それを再現する脳と体がきちんと連動していないと速く滑ることはできないのです。100m9秒台で走るには、マラソン選手の体では記録が出ないのと一緒で、アルペンやモーグル、技術選のトップレベルになるには、レベルにあった身体能力は必要です。

ここまで読んだ方はもうお分かりかと思いますが、基礎スキーとは「どんな斜面でも滑り降りれる技術」です。一般の人が安全に楽しくゲレンデで滑れるようになる技術です。一方、競技スキーはそこに速さに対する技術がプラスアルファで入ってきます。実際、競技の世界に来る人はだいたい1級レベルになってからトライする人がほとんどです。

文句ばかり言うスキーヤーは成長しない。

 以前、SNSで

「競技やらないといけないのかよ」

という人がいましたが、正確には雪上練習だけでなく、旗門を速く滑るための夏場の練習メニューも全部こなさないといけないわけです。

これが嫌なのであれば、普通に上手に滑ることはできても、高速で正確な滑りはできないです。これはアルペンに限らず、モーグルも一緒です。

また、基礎スキーは自分の好きなターン弧を描けますが、アルペン競技はそれができません。

なので、アルペン選手は基礎も競技両方こなせますが、基礎だけの人は基礎しかないので、ゲレンデに棒が立っただけで、かつスピードを出すと下手になる人が多いのは明らかに

競技の基礎と競技の応用技術」

がないです。

例(あえて分けました^^;)
  1. アルペンの基礎技術(例:腕を前にしたフォールライン)
  2. アルペンの応用技術(例:クローチング状態でのフォールライン)

もちろん、中には総合的に練習し、上手い基礎スキーヤーもいますし、インターハイに行けなくてもナショナデモになった方もいます。要は努力の仕方と考えます。

例:基礎スキーではプルークボーゲンを習いますが、アルペンでもプルークボーゲンを何回もします。応用編、つまり競技では外足荷重をどう使うかをボーゲンから学ぶのです。(下記動画参照)

日本では基礎と競技を派閥的に分けて考えたがる人がいますが、競技の人は基礎が土台にあって競技やってる人が大半なので、基礎スキー検定(バッジテスト)一発合格は割と当たり前だったりします。

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私も1級一発合格でした。

アルペン選手は練習で普通にプルークボーゲンや試合ではタブーなズラす滑りとかします。

下手をすれば基礎派と自称する人たちよりも遥かにアルペン選手の方が基礎練習をしてる可能性もあるでしょう。

そもそも技術選のような点数をつける試合自体が日本くらいしかないそうです。バブル時代は海外招待選手もいて、アルベールビル五輪のモーグル選手とかも出てましたが、今は全日本の大会になりました。(流行病がなければ2020年から「第1回国際スキー技術選手権」の予定だったようです。)本来であれば総合格闘技的な立ち位置なので、各競技団体からオリンピック選手が出てくるくらい盛り上がっても良いはずです。技術選の人たちは確かに上手いのですが、海外のレベルの高い人が見て「上手い」と思うかわかりません。個人的には好きなんですけどね。フィギュアスケートのような技がないなら、もっと差別化できる急斜面やW杯並みのアイスバーンで勝負させればホンモノが誰かハッキリするはず。アルペン同様、スキーは斜面の難易度を上げればレベルは誰が見てもわかりますから。カチカチのコースである全日本選手権の直後に同じコースで技術選やれば面白いかも?と考えたりします。

理由4:タイムを競うことで課題が明確になる。体力も違う。

映像で滑りを確認できるのは基礎も競技も一緒ですが、ここにタイムが加わってくるので

どこのターンで失敗したか

をトップと比較することで正確に次の課題が明確になります。(W杯だと区間タイムのランキングがあるので全世界の選手たちの研究材料となり、練習に活かせる仕組みができています。)

 一方、ジャッジスポーツはジャッジが点数を決めるので、謎の部分が残るでしょう。もちろん、検定レベルでも明らかにわかる部分はあるので、わかる人には失敗した部分の課題が明確になるのですが、タイムまではわかりません。

 アルペンの場合、ターンの抜けなどがタイム差でしっかりと出るので急斜面、中斜面、緩斜面を分けて見比べることで足りない部分がよくわかります。

場合によっては技術を出すための体力不足なんてこともアルペンではわかったりします。

レベルの高い選手ほどやはり筋力数値が高いことは下記のPDFにある研究でもわかってるので、興味のある人は読んでみてください。

大学アルペンスキー選手の体力値と FIS ポイントの関連性と有効性―世界一流アルペンスキー選手の体力値からトレーニング目標値の検討―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jskisciences/12/1/12_51/_pdf

アルペンスキーの技術解説を1枚の画像にまとめた。

アルペンスキーのターン構成

スキー上達に必要な要素

本当に上手いスキーヤーとは何か。

以前、技術選のジャッジについての記事を書いたとき、SNSで検定員と名乗る方がこう書いてました。

「スキーの上手さをきちんと定義しないといけないですね」

この考えに私は同意です。

 ただ、人によって解釈が異なりますが、決定的にわかりやすい定義が私の中にはきちんとあります。

それは・・・

どんな斜面、状況でも上手く滑れる人

です。

 例えば技術選には無い種目も、普通にこなせるスキーヤーはたくさんいます。

技術選には無い種目
  1. アルペンW杯?並みの硬さのアイスバーン
  2. 大回り不整地(90年代の技術選種目)
  3. アルペン種目(技術系・高速系)
  4. モーグル種目
  5. スキークロスなどのフリースタイル系種目
  6. バックカントリーや深雪

私はスキークロスには挑戦したことがないですが、アルペンW杯で3回表彰台に登った佐々木明選手はフリースタイル系のスキーを昔から好んでやってますし、現役を退いている8年間は山スキーの世界にいました。

また、アルペン日本代表からスキークロスに4人転向するなど、アルペンから別の種目に移る選手も結構多いです。

しかし、他の種目からアルペンに移動して結果を残すという選手はまだ見かけたことがありません。(知らないだけかもしれませんが・・・)

ちなみに、私のスキー部では5番以外全部経験しています。

というか、やらされます。(汗)

 監督は元アルペン日本代表ですが、やはりコブも普通に滑れましたし、なぜコブが重要かもきちんと選手たちに説明していました。

逆に、モーグル出身で技術選に出てくる選手も中にはいたとどこかで聞きましたが、大回りなどで苦戦するという話を聞いたことがあります。

 アルペンスキー競技はゼッケンが後ろならモーグルのように掘れた斜面を滑らないといけなく、アルペンからモーグルに転向してW杯で優勝した選手もいます。絶対とは言いませんが、過去の歴史から見て、1番広範囲に渡った技術を習得できるのがアルペン競技の魅力ではないかと考えます。

追伸:あくまでも個人の感想です。

まとめ:アルペン選手がなぜ技術選上位に来るか?

  1. スピードに強いから
  2. アルペン選手はコブや深雪なども滑るから
  3. 旗門を滑るから
  4. タイムを競うから

以上の4つの点でアルペン選手が有利というのがなんとなく理解していただけたかと思います。

中には

「全日本スキー連盟のトップ次第」

とかの都市伝説?がネット上で昔見たことがありますが、世界的な流れもあると思うので、トップが誰だろうが関係ないのではと個人的には思っています。

 上手い選手はどんなルールにしても上手いですし、結果を残します。

そしてそのための準備を怠りません。

これは基礎だろうが競技だろうが関係ないです。

本番で結果を出すこと。

それがきちんとできるスキーヤーが実績を残せるというシンプルな話です。

アルペンスキー選手は日々大会ですから本番の連続です。そういった意味では本番慣れしてると言えるかもしれません。

 一方、技術選は年1回しかないというまた違った調整が必要になりますが、これは出場する選手全員同じなので、どの競技出身かはあまり関係ないでしょう。

技術選はアルペンや基礎、フリースタイル系から出場する総合格闘技のような立ち位置なので、アルペン以外の出身者が勝つ時代になるとより注目され盛り上がるのではないかと思っています。

今後の技術選、引き続き期待しています。

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